Cochliostema odoratissimum Lem
コクリオステマ・オドラティッシムム (ツユクサ科)


中南米のコロンビア、コスタリカ、パナマ、エクアドルに分布するツユクサ科の着生多年草。 大きな葉が鞘状に重なる姿からは、とてもツユクサ科とは思えない。 1859年に熱帯アメリカで採集されイギリスで栽培されていた本種を、ベルギーのLemaireが新属であると判断して、Cochliostema odoratissimumとして記載した。


 1. 全体

 2. 葉腋から集散花序

 
3. 集散花序 

4. 花径 約5cm

葉の腋から集散花序がでて、青紫色~赤紫色をしたとても良い香りの花を咲かせる。 種小名‛odoratissimum’は「非常に香りのよい」の意味でこの特徴を表している。
花弁には多細胞の毛がたくさん生えている、芳香を放つ役割をしているのだろうか。

5. 花弁にふさふさの毛

6. 花弁の多細胞の毛


仮雄しべは前方に3本ある。中央の1本は痕跡のみ、2本は両側にあって葯はなく毛が生える。 

雄しべは後方にあり、3本の花糸が融合して袋状になり、両側の2つの先端が長く伸びてチューブ状になった独特の形状をしている。 雄しべ群はつねに雌しべよりも花の右側に位置し背側に鮮やかな黄色の毛が房状に生えている。


7. 花 
 
 8. 雄しべ、雌しべ、仮雄しべ (1目盛=1mm)

9. 3本の花糸が融合した雄しべ

10. 葯隔はそれぞれ伸びて管になる 


葯は両側の雄しべの葯隔が広がって袋状になった構造物に包まれている。 開いてみると、コイル状の葯が縦方向に2個、横方向に1個配置し花粉が大量に生産される。 
Cochliostemaの属名は、ギリシャ語のkochlio(らせん形の )とstema(雄ずい)に由来している。


11. 雄しべの腹面
 
12. 3個のらせん状の葯


コクリオステマの雄しべの独特の構造は、バズ・ポリネーションのためと考えられる。 雄しべを単に振っただけでは花粉は出ないが、ある種のハチ(シタバチ族やクマバチの仲間)が特定の周波数で羽ばたくと雄しべが共振して揺れが大きくなり、葯がはじけ、たくさんの花粉が放出される。

実際にハチが訪問しているのを観察したいところだがすでに11月下旬なので、代わりに金属を振動させて雄しべを震わせてみたところ、似た現象が見られた(13a-b)。
長く伸びてチューブ状になった先端から細かい花粉が次々と飛び出して、時には一斉に噴出したりした。 ここから飛び出した花粉は訪問バチの体にみごとに付着するだろう。 

この様子は 『植物の世界(1996 )』の中にも、「コクリオステマはコイル状の葯をもつ非常に変わった雄しべをもち、花に昆虫がとまると、ライフル銃のように花粉を放出する」と記述されている。


13a. 先端から細かい花粉が次々と飛び出す

13b. 花粉の噴出
 
14a. 花粉
 

14b. 花粉 50-55×15-18μm

花粉は白色でとても細かくラグビーボール型をしている。

  TOP       なかなかの植物ルーム      BBS